東青山


〇 珈琲豆、入荷のお知らせ

2020. 5. 6 [ニュース]
 

大坊珈琲店のコーヒー豆

 大坊さんちのコーヒー豆


 庄野潤三がたしか三十代のころ、アメリカ中西部の片田舎に一年間滞在していたときのことだ。ある日、彼のもとに小さな封書が届いた。差出人は小沼丹である。ああ、小沼は日本でいつもどおりの生活をしているのだろうなあ、そんなひとから、まして家族でもないのにわざわざ海外の人間に宛てて郵便を出してくれるなんて、ちょっとおどろいた。さっそく中身を見ると、新宿の飲み屋のマッチの空き箱がきれいに平たくしてあって入っていた。よく行っていた飲み屋のマッチをこんなところで目にするなんて思ってもみなかったから、さらにおどろいた。添えてあった手紙にはこんなことが書かれていた。「君がホームシックを起こすようにこのマッチを同封しておきます」さいしょは、なんだなんだ、と思ったものの、ゆっくりと時間がたつと、なかなかいい手紙だなあ、なんて気持ちがゆれたのだという。生まれてはじめての場所で心もとなくなっていたであろう庄野潤三への、小沼丹のちょっとした友情のしるし。「マッチの箱が主なので、便箋の方にしるされたのは、いわば脚注のごときものである。」庄野はそう述べている。メールでは到底できっこない、すてきな話だなあ、とおもう。むかし、大坊珈琲店にかよっていた。いまもマッチの空き箱が家のあちこちに転がっている。どうしても捨てられずにいて、ずっと目のつくところにある。それをたまに手にするとなぜだかこの話を思い出すのだった。大坊さんの手でいれたコーヒーを飲むことは、いまはなかなかできなくなったけれど、おなじコーヒー豆で自分の手でいれてみることは、なんだかだれかに手紙でも書いているような時間になる。その書いた手紙を読み返すみたいに飲んでみる。これでいいのかなあ、って。


 お知らせ

「大坊珈琲店」の珈琲豆が入荷いたしました。
コロンビア、タンザニア、グアテマラ、エチオピアのブレンド100g入りです。
定期的に今後も入荷の予定です。
随時お問い合わせください。

 

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