東青山


〇 米を研ぐ、炊く、蒸らす

2011. 11. 9 [虎の巻]
 

石田紀佳企画の米を炊く虎の巻、立花英久バーナーブロス スペース

一、「炊き干し」という飯炊き技術

 乾物である米を水でもどして煮る。ごはんを炊くというのは、つまりはそういうことなのですが、「米を煮る」とはいいません。なぜでしょう。西日本では米以外の野菜を煮ることも「炊く」というようですが、やっぱり米は煮るとはいいません。米の調理は特別な感じがします。
 実は、現在主流の日本の飯炊きはかなり高度な技術です。鍋釜の蓋を閉じて加熱して、食べるときには米粒に水が充分に含まれながらも、余分な水が鍋に残らないようにする芸当! この調理法は専門用語で「炊き干し」といわれます。これに対して煮汁を絞りとって煮る「湯取り」があります。多分「湯取り」のほうが簡単なのでしょう。というのは私もはじめてひとりで米を鍋で炊いたときに、蓋を開けつつ中の様子を見て、湯をとったおぼえがあるからです。しかももったいないことにその重湯(みたいなもの)を捨てました。「湯取り」というやり方があるとは知らず、ただただ帳尻合わせのように湯をとったのですが、囲炉裏でご飯を炊いていたころは、この湯取り法が一般的だったと民俗学の書物にはあります。そのためノリトリザルというのがあって、煮え上がっている鍋にそれを差し込んで、水分をとった地方もあったそうです。
 一説にはアクのある米の場合は、炊き干しでは苦いので、湯取りにするといわれます。小豆のアクを茹でこぼすみたいなものでしょう。たしかに赤米などアクの強い米もあります。インドで雑穀を湯取りで炊いているのを見たことがあります。でも充分に精米して研いだ日本の米は茹でこぼす必要はないし、かえって旨味が減ってしまいます。
 「炊き干し」......炊いて、干す。煮ると蒸すをあわせたようなこの方法。米のひとつぶ一粒が際立ちながらも、まとまりをもつのです。おむすびもこれでなくては結べず、このようなごはんにするために、先人たちは米の品質から、炊飯器具とその使い方を工夫してきました。
 無洗米でも炊飯器でもそれなりのごはんが炊けます。でも飯炊きにまつわる一連の所作とあらためて向き合えば、ひと味違った日常とごはんに出会えます。
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