東青山


〇 おひつ

2013. 11. 25 [日用品]
 

木曽椹のおひつ

 飯の寄りどころ


 妻が台所で炊きたての米をおひつに移しかえている。米は湯気を上げて、踠きながらも愉しげに妻の操るしゃもじから転げ落ちる。妻はその上から、まるで米の歓声を塞ぐみたいに軽ーく布巾を被せて、ぱたんと蓋を閉める。それから、傍ら牛蒡のきんぴらを小鉢に盛りつけはじめる。私はテレビを消して食卓につく、
「じゃ、いただきましょ」と妻の合図にしたがう。
 私たちの夕餉は、いつも通りに手を合わせてはじまる。
 米はこんど、おひつから飯茶碗によそわれる。そのころ米は、汗がひいたみたいにやけに落ち着き払って艶っぽい。噛めば歯ごたえがいい、香りもたつ。もしも米に運動があるとすれば、どうやらクライマックスは釜からおひつへと納まるところのようである。
 今時分、おおかたのふるまいでは、おひつの動作はなくてよい。けれども、なくてもよい動作こそが米の潜在能力を余さず引き出しているらしい。寄り道のようで、それが本筋であることのほうが私たちの生活にはたくさんあったはずだ。私たちはそれを、「加味」を超越した、「醍醐味」、と言ってきたのではなかろうか。
 明くる日の朝、おひつの冷や飯は、ほくほくの焼き鮭と味噌汁に塩梅がよい。少々行儀がわるいが、二膳目は味噌汁に投入してさくさく搔き込んで、合掌した。


 このおひつは

 およそ樹齢100年、木曽の地に育った椹(さわら)という材の、「柾目」を使って拵えている。水気をよく吸い、そのくせ耐水性に秀でたこの材ならでは、炊きたての米を適度な水分に保ってくれて、米に歯ごたえを与え、旨みと甘み、ふくよかな香りを引き出してくれる。
「いちど、おひつにうつしかえる」
 昔ながらの「手心」を、ぜひ食卓に。

 商品名 おひつ
 素材  木曽椹(きそさわら)、銅
 製造  山一(長野県木曽郡)
 制作  東屋
 寸法  二合 径180mm × 高125mm
     三合 径205mm × 高140mm
     五合 径235mm × 高160mm
 価格  二合  9,720円
     三合 12,960円
     五合 16,200円

おひつ 二合    
おひつ 三合    
おひつ 五合    
 

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