〇 ティシューケース
カフン・カフン・カフン
ティシューを一葉抜いて、彼女は両手で鼻を強くつまむと一息にかんだ。そのなまぬるい音とはうらはらに、風は乾いた空気を考えもなく部屋のなかに押し込んでくる。そうか、もう春なのだ、と私は思った。
「カフン、カフン」と彼女は言う。カフンという言葉がティシューといっしょに丸められ、くずかごに捨てられていく。
外に出ると、白いマスクのひとたちを頻繁に見かけるようになった。あなたはそのひとたちの辛さを一生わかってあげられないのね、と彼女はこの季節になると言うのだった。彼女もマスクをしている。だから聞き取りにくい。私は「えっ?」と聞きかえすが、ほんとうに聞き取りにくいときと、わざとのときもある。
彼女と散歩に出かけたときだった。だいたいが静かな住宅地だ。表札を見ては珍名さんを探し、住居の趣を勝手に判定して廻る。ある民家の垣根から、梅が咲きほころんでいるのを見かけた。彼女はマスクをあごのほうまでずらして、薄紅に色づいた花弁に鼻を近づけて、息を吸い込んだ。
「いい匂い」と彼女は言った。
「ねえ、カフンは大丈夫なの?」と私が問うと、
「ほらやっぱりなんにもわかってないのよ」と、彼女はマスクを定位置に戻した。「目に見えないものにわたしたちは苦しんでるの!」
彼女の言う「わたしたち」に、私は入っていない。ワレワレは、とかいう異星のひとを思いだして、
「えっ?」と問いかえしてみる。まるで言葉が通じなかったみたいに。
「もういい!」と彼女は言う、が、くしゃみで的を外したみたいになった。それでもかまわず彼女は闊歩する。先を行く後ろ姿が、私の目にはまぶしいくらい、見えている。
このティシューペーパー・ケースは
樹齢二百年以上の木曾檜の上材から、さらに貴重な柾目を選りすぐってこしらえました。檜は木肌が白く、艶があり、美材の代表格のように持ち上げられますが、本来は「際立たない」美しさこそが檜の持ち味。目立たず、置き場所を選ばない、なおかつ、無垢そのままの指物なので、檜ならではの清々しい香気も愉しむことができます。
ひとにも場所にも落ち着きのよい、ティシューペーパー・ケース。
商品名 ティシューケース
素材 木曽檜
製造 山一(長野県木曽郡)
制作 東屋
寸法 幅257mm × 奥行132mm × 高85mm
価格 7,400円
〇 裁縫箱
おさまりのいい箱
たとえば、「日用品」、と文字に書き記すと、その字画から、タナのような、ヒキダシのような、あるいはハコのような、どこかに立てかけるみたいに、ぽん、ぽん、ぽん、と配置されたそれらはやがて図形の風体となって、ついには手に手を取って踊りはじめる。そうやって三つ巴となった図形をさらに細かく刻んで見ると、みるみる四角いハコの積み重ねにしか見えてこず、いまいちど順を辿って、日、用、品、と見返しても、もはや入れ子の展開図にしか見えてこなくなるのである。その中に日用品はかたづけられ、そのもの自体もまた、日用品として括られていくわけだけれど、つまりはおさめるハコもまた、日用品なのである。
日用品にかぎらず、「ハコ」という単位で私たちを取り巻くなりわいを俯瞰してみれば、なんとまあ限りない大中小の数々があることか。私たちは、その中の、あるいはまたその中の、もうひとつ中の、さらにまたその中の、きっとどこかにいるのだろうけれど、「わたし」をみつけてもらいたければ、けっきょく整理整頓が必須、ということになる。
なぜ、ひとは、ものを、ことを、おさめにかかるのか。それはそこに箱があるからだ、だろうけれど、たとえば私など、ひとたび空箱でもみつけようものなら、とにかく何かをおさめたくなる欲求にかられ、けれどもそこにおさめる何かをずっと探しつづけているだけで、じつのところそんな営みの中に、私は埋没し、いまだおさまりがつかない、今日このごろなのである。
日用品は実用品でありたい。箱もまたしかり。探すべきは、おさまりのいい箱、なのかもしれない。
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〇 米櫃
保管する、ということ
子供のころからずっと使っている国語辞書によれば、「保管」とは、(他人の)物をあずかって、いためたりなくしたりしないように保っておくこと、だそうだ。「保存」は。そのままの状態を保つようにして、とっておくこと、らしい。お米の場合、どうだろう。(自然の)物をさずかって、いためたりなくしたりしないように保っておく、どうやら「保管」が似合いそうだ。
まっしろで、きらきらしたお米の粒片。さらさらと米櫃のなかに積もってゆく。そんな様子を見ていると、なんだか、ほっ、と白い息を吐くみたいに、安心したのか「しばらくねむるね」ってしんしん聞こえてくる。きちんと箱におさめてみると、「大切にする」というあたりまえの言葉が、ますますかがやきはじめる。
としを越そう。
大切なものは、大切なまま。
日のあたらない場所の、箱のかげかたちをながめていると、いつのまにかふりかえっていた。日なたに向かって、前を向こうとおもう。
この米櫃は
大切なものを、大切にそのままおさめておきたい。たとえば箱でもこしらえて、大切にとっておきたい。人の知恵がえらんだのは、「桐」という自然の恵みでした。
桐は、タンニン、セサミン、パウロニン、といった成分が含まれていて、防腐、防虫の効果があります。桐は、繊維のしくみが多孔質であるため、湿温の調整にすぐれています。桐は、何より軽量であることから、保管箱として重宝されてきた歴史があります。この米櫃ももちろん、桐の箱。毎日いただくお米を、やさしく、丁寧に、保管しておけばさらにおいしいごはんがいただけそうです。
この米櫃は、間口を広くとり、密閉性にすぐれた引き戸をしつらいました。お米の出し入れに面倒がかからず、引き戸自体が上ぶたとして取り外せるので内側のお手入れにも手間がかかりません。「指物」の密な作りが、しっかりと外気を遮断してくれ、お米を保管するにはうってつけの、これぞ「米櫃」、です。
商品名 米櫃
素材 桐
製造 松田桐箱(埼玉県春日部市)
制作 東屋
寸法 5キロ 幅24cm x 奥行30cm x 高さ18cm
10キロ 幅24cm x 奥行30cm x 高さ27cm
価格 5キロ 7,875円
10キロ 9,660円
